世界学術会議が設立したフューチャー・アースは地球環境の未来を研究する10年関限定の問題解決型機関
名古屋発2013-12-18ブログ管理人
2013年12月16-17日に名古屋大学環境学研究科の主催で、グローバルCOE臨床環境学国際シンポジウムが、ドイツからローマクラブ共同会長のヴァイツゼッカー博士を招いて開催された。
17日にはパネルディスカッションが持たれ、その中のパネリストで、日本学術会議議長の安成哲三教授が2012年に設立された国際研究機関フューチャー・アース(Future Earth、以下FE)についての議論が行われた。安成教授はFEの設立委員会の一人である。
FEは2012年に世界学術会議の呼びかけで「押し潰されそうな天体・地球」をテーマに議論された会議で設立が決まったもので、これから10年間の間に世界中の人文科学、社会科学、自然科学、経済、産業、政治の英知を集めて解決策を見つける為の機関である。
最初にヴァイツゼッカー博士が、FEの一番の課題はどのように人々を巻き込んで行くかにかかっている。単なる学者の研究に終わっていては地球環境にとって何の価値も持たないと語った。また、科学者と一般人は異なる言語を話しており、相互理解のためには共通の言語が必要であるとした。
安成教授は、FEは研究団体では無く解決型のプロジェクトで、そのメンバーにはスポンサーでありステークホルダーとして経済界の人もいる。彼らは、損得に疎い研究者とは違って鋭い鼻を持っている。彼らの同意が受けられなければプロジェクトは始まることはないと述べた。
ヴァイツゼッカー博士は、古典的な経済学者は統計を基に数学的に理論を組み立てている。統計とは過去から学ぶ事であり、未来を展望する力は無い。FEは地球の未来を考えるのであるから、過去のデータから地球の未来を計画することはできない。FEに加える経済学者は従来の数学的に経済を論じる古典的な経済学者ではない人を選ぶことが重要であると述べた。
このシンポジウムの主催者である林良嗣教授は、最近の研究者は特に自然科学系の研究者には将来を見通し構想を持つことが不得手のようであるが、FEの研究者には欠かすことができないと語った。
ヴァイツゼッカー博士は、FEの科学者はとにかくできる限り多くの人たちと会話をすることが重要である。人々の持っている経験から学ぶ事は多い。そして、地球環境について、エネルギーの使い方について若いころから教育をすることを考えてもらいたい。小中学校で環境問題について教えるようにするべきである。また、資源価格を高くすることが資源を無駄遣いしない最も良い方法であることを教育して行かなければならないとし、環境税も有効な方法であると述べた。
林教授は、ロンドン市が市内乗り入れの自動車に課税した渋滞税について話し、ロンドン市民は最初は反対する人が多かったが、導入後市内の交通がスムースに流れるようになり、5ポンドだった税金が今は8ポンドに上がっている。その税収で、公共交通機関の近代化を進めた為に、現在のロンドンは見違えるように市内交通が順調に流れるようになったと例をあげて説明し、科学者は市民に説明する事が重要であるとした。
このようにFEに関して活発なディスカッションが行われ、ブログ管理人にとっては、大変に勉強になるシンポジウムであった。
フューチャー・アースのホームページ(英文) URL:http://www.futureearth.info/ |