「競争」から「共生」で、賢く経済を収縮させるスマートシュリンクは可能
ブログ管理人
12月16〜17日に名古屋大学で開かれた、グローバルCOE臨床環境学シンポジウムでホストを務められた林良嗣環境学研究科教授は、地球環境の未来にとって、日本などの人口減少が始まっている国こそが、成長経済ではなく収縮経済を基本にする産業構造、社会構造、市場経済の賢い再構築にとりかかるべきであると数年前から論じている。
日本は、世界に例を見ない早さで少子高齢化が進み、人口減少が進んでいる。2012年に内閣府が発表した人口予測によると、2010年に1億2600万人であったが2060年には8700万人と50年間で30%の人口減少が予測されている。人口が減ってゆくのであるから、経済は縮小して行くと考えるのが普通の考え方である。
しかし、今の経済学は全て成長経済を前提に、つまり右肩上がり経済を基本に作られている。経済は成長するもので、政府も企業も成長を続ける事しか前提にしていない。そうやって世界は産業革命以来成長を続けてきた結果、1800年には10億人であった地球人口は200年後の2000年には60億人となり、現在は70億人、2040年には90億人に達する。しかし、これまで成長を続けてきたOECD諸国の内、アメリカやメキシコと言った一部の国を除いて日本、韓国、欧州諸国では人口減少が始まっている。
経済を収縮させるということは並大抵の事ではない。戦争でも攻撃より、撤退する時の方が損害が大きくなる。過去に、ナポレオンもヒットラーも撤退の戦略が考えられていなかったので、撤退の際に大きな損失を出している。これまでの経済学者は、収縮経済など聞いたことも無いので恐らくイメージもできない。
これまでの経済は「競争」を基本にしていた。市場競争に勝つことで、利益を上げることができた。しかし、市場競争は多くの資源の無駄を生む。食糧問題を例にとると、現在世界で年間23億トンの食糧が生産されているが、そのうち11億トンが消費者の手に渡る前に廃棄されている。世界で13億人の人が飢餓で苦しんでいるのにかかわらすである。これは、市場性の悪い商品を売ると競争に負けるので、初めからそれらは市場に出さないからである。この無駄を無くすことは売上の低下になるが、環境負荷は大幅に緩和される。
食料はほんの一例で全ての資源を無駄に使って経済成長を支えてきたのである。これからは、「競争」から「共生」に変えて行かなければならない。その為の経済戦略を作る必要がある。日本は人口減少と少子高齢化の最先端を走っているのだから、最も早く問題解決の方法を見つける事ができるはずである。安倍政権の経済成長戦略会議などは直ちにゴミ箱に捨てて、経済収縮戦略会議に変えるべきである。これには、旧態依然とした経済学者や財界人は必要ない。彼らもゴミ箱行きである。シカゴ学派に変わる名古屋学派の台頭を期待する。 |