数十年サイクルで起きる気候変動が歴史を変えた。
ブログ管理人
12月16〜17日に名古屋大学で開催されたグローバルCOE国際シンポジウムの発表の中で、名古屋大学環境学研究科の中塚武教授の話は大変興味深いものがあった。
中塚教授は、海洋ではサンゴの年輪、地上では樹木の年輪の酸素同位体を調べる事で、何千年もの昔にさかのぼって気候の詳細を年月単位で復元する研究をされているが、古気候の復元と人類の社会活動の歴史を組み合わせることで、地球環境と人類の営みの関係を探っている。酸素同位体の変化をウエーブレット解析して数十年の周期の変化と歴史年表を重ねる事で相関を見ると言う、自然科学と人文科学の学際的研究である。
中塚教授の研究によれば、地球環境が数十年サイクルで大きく変動をした時に歴史上の大きなエポックが起きていると言う。まだ、西洋史との関連性の検証は終わっていないとの事であるが、これは世界的にあてはまることらしい。
数十年サイクルで干ばつと洪水が交互に発生する気候変動サイクルが何度か起きた後には、戦争や政権の交代が起きているという。これは、数十年と言う単位が人間の寿命の単位と近い事に起因しているらしい。
干ばつによる飢饉が襲ってきても、その世代に生きている人達の記憶には、数十年前にも同じような事が有ったが、また元に戻ったと言う記憶が残っており、こんども辛抱していれば又元に戻るであろうと期待し、大きな改革を起こそうとしない。その為に人類は環境の変化に対応しようとせず、一つの文明の崩壊のような大きな歴史的変化が人類社会に現れていると言うのである。
その端的な例として、交通渋滞を取り上げて説明していたが、交通渋滞に対応する方法として、右肩上がり経済を経験して来た世代が出す答えは、道路幅を広げ、高速道路を増やすと言うものになる。この結果は化石燃料の大量消費と大気汚染、地球温暖化などの環境負荷の増大である。車離れが起きている若い世代の中には、極端に自動車を無くせば良いと考える人もいるであろう。理想的な答えは、交通機関を車から電車や自転車に変えるモーダルシフトであるが、過去の記憶に引きづられてなかなか決断ができない。これが現状の様である。
高度成長経済、バブルなどを経験した団塊の世代前後の世代は、刷り込まれた右肩上がり経済からなかなか脱却できない為に、地球環境の変動に対し反応が悪いのかも知れない。今後も中塚教授の研究に注目したい。
|