ヴァイツゼッカーの著作「ファクター5」が訴えているもの
ブログ管理人
発達したIT技術のお陰でブログ管理人のような一個人であっても、このようにインターネットを経由してブログを発信する事が可能となった。今日も、思わぬ人が小ブログを読んでいると聞かされ驚かされ、ブログは規模は小さくとも一つのマスコミュニケーション・メディアなので、誰が読んでいるのかは分からないので、書く内容はいい加減であってはならないと、気の引き締まる思いをさせられた。
ファクター5のパートIは、分野別にどうすれば資源やエネルギーを5倍に活用できるかを紹介している。その目的は、我々人類は、現在の科学技術で、資源やエネルギー生産性を5倍以上に上げる技術を既に手にしているのだと言うことを知ってもらう事に有る。それなら、何故すぐに我々ははじめないのか、それこそがドイツの環境学者ウルリッヒ・フォン・ヴァイツゼッカー教授が言いたい事なのである。
パートIIでは、法的規制、経済的手段、環境リバウンド、長期的環境税、国家と市場のバランスと言う5つの章で、人類がこれまで何故、化石燃料を野放図に使い続けているのか、社会科学のアスペクトから論じ、どのような解決策があるかと提言している。
最後の第11章「足るを知る」では、17世紀の哲学者トーマス・ホッブスと現代人類学者のメアリー・クラークと言う対称的な2人の論を対比して人間の本質に迫る議論を展開している。産業革命台頭と同時期にホッブスは人間の本質は闘争状態にあるとし、競争社会の基盤となる思想となった。それに対し、クラークは人類は本質的に協調をする存在で、社会的連帯があってこそ社会そのものが生き延びる事ができてきたとする。詳細はファクター5をお読みいただきたいが、このなかで人間が本質的に持っている欲求の一つに、新生児が生まれ、母とのつながりを求め、それを獲得するための結び付きへの欲求があるとしている。例え原始時代のような過酷な条件下で生きる人間であっても、生まれたての赤ん坊が、母の乳房を欲しがる様子を見る時には、優しい感情が呼び出され、この小さな命を守る為の勇気を奮い立たせる事ができた。それは家族で無くても自然に出るものある。現代人でも、赤ん坊の笑顔を見て悪い感情を持つ人は居ない。
市場経済と言うエゴイズムと闘争心から生まれた社会システムは、地球環境すら支配下に置こうとして来た。それが、持続可能では無い事に半分気が付きながら、競争を止められないのが現代人である。それを変えるのがグリーン経済革命であるとヴァイツゼッカーは提唱している。
ローマクラブ共同会長となったヴァイツゼッカーが、ローマクラブへの報告として上梓した「ファクター5」は来る3月25日明石書店から刊行される。A5版 400ページ 本体価格4,200円で全国の書店で販売される。 |