クリミアを失ったウクライナのエネルギー政策
EWS-Newswire 2014-03-21より、
3月21日キエフ発、ウクライナのエネルギー安全保障の専門家ロバート・ベンシュ(Robert Bensh)氏にクリミアがロシアに統合された後のウクライナの石油とガス産業の構造変化についてEWSがインタビューした。
ベンシュ氏はウクライナでガス企業を13年間率いていた他、前エネルギ―大臣のユリ・ボイコ(Yuri Boyko)氏のエネルギー政策補佐官としてエネルギー政策と西側資本市場問題を担当していた人物で、ウクライナのエネルギー問題のエキスパートである。ベンシュ氏によると、クリミアを失った事はウクライナのエネルギー政策にに、さほどの影響は与えないとする。新政府のシェールガス開発とトルコ政府のウクライナとの協調の方がより大きな影響力を持っているとする。
EWS: ロシアがクリミアを統合したが、ロシアがさらにウクライナ東部に侵攻するのではないかとの見方があるが。
ベンシュ氏: この問題は事実上既に一件落着である。クリミアはロシアとなり、ウクライナのだれもが勝手にしろと思っている。クリミアのウクライナ軍はこれまでロシア軍と協調関係に有ったが、今ロシア軍から離れウクライナに戻っている。
ロシアがウクライナの東部に侵攻することは無いと思う。もしもロシア軍がウクライナ東部へタンクを動かしたら、弾を一発も撃たなくてもポーランド、ルーマニア、バルト諸国は直ちにNATOの第5条を発動する。恐らくハンガリーとスロバキアもそれに協調する。その場合には、米軍はNATOの後ろ盾になると米軍の高官は明言している。
EWS: そうですか。クリミアは無くなったとあっさり認めるのですね。これはウクライナのエネルギー政策にどの様な影響を与えるのでしょう。
ベンシュ氏: クリミアには黒海オフショア石油ガス開発の可能性があった。しかし、ウクライナにはシェールガス田も多数あり、これはウクライナの他の地域に分布している。一つ気になるのは、ウクライナの大手ガス企業コルノモルナフトガス社がクリミアに有る為にこれがロシアの支配下となる。後一つは黒海のオフショア計画を提案していたエクソン・モービルが交渉相手を無くしプロジェクトが宙に浮く事だ。
クリミアのガス価格はロシア支配となり大幅に下落する。これはガス企業にとって全く経験の無い事である。高度に発達した経済システムのクリミアのような地域は、アフリカの国々とは違い政変が起きた時の影響は計り知れない。
EWS: ウクライナのパイプラインにとってはどのような意味を持つか。
ベンシュ氏: ウクライナのパイプラインは、ロシアが全ウクライナを支配下に置かない限りはウクライナに帰属する。ウクライナの重工業の中心地ドンバス(Donbass)をロシアが支配するようになれば影響が出るが、そんな事をしたらNATOが黙っていない。ロシアは既に半分近くのガスをウクライナをう回したパイプラインでヨーロッパに供給している。現在建設中の南側ルートが出来ればほとんどのガスがウクライナを経由せずにヨーロッパに輸出される。
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原文(英文)URL: http://ens-newswire.com/2014/03/21/loss-of-crimea-changes-ukraines-energy-picture-robert-bensh/ |