文科省が作った、新しい「小学生のための放射線副読本」
ブログ管理人
日本では1977年にゆとり教育が取り入れられて以来、過去30年間学校で放射線に関する教育はされていなかった。ところが2011年3月11日の福島原発事故の後、脱原発世論が高まるのを見据えて政府は、小中学校で放射線教育を復活させた。その表向きの目的は、小中学生に正しい放射線の知識を与え放射線被害から身を守ることに有るとしているが、その本当の目的は別の所にあるようである。文科省は2012年度の教育指導要領に小中学校における放射線教育を取り入れた。現場で教育に当るのは理科担当の教師であるが、これまで全く経験の無い放射線についての知識を急遽身に付けなければならない。その為文科省は副読本を用意し、担当教師への特別講習会を行う団体NPO法人放射線教育フォーラムは、希望する教師を顎足付きで招待している。その潤沢な予算は、原発推進の電力事業連合会の関連団体から寄付されていると言われている。
文科省は2014年3月3日に新しい小学生の為の放射線副読本を発表した。これは2011年10月に出版された副読本の改訂版で、旧版には驚く事に記述そのものが無かった福島原発事故に触れている。しかし、全体から伝わるメッセージは、原発事故による風評被害を抑える事のようである。これを1200万部印刷して全国の学校に配布するとしている。
まず、福島原発事故が地震と津波により起きたとしており、外部電源の供給ができなくなると言うシステム上の欠陥に原因があった事には触れていない。石炭や石油は火を消せば熱は出ないが、核燃料は人為的に制御しないと核分裂は止まらず熱を出し続ける性質が有る事にも触れておらず、福島原発がメルトダウンした事実にも触れていない。これらの点から、原発事故の事実を正しく説明しているとは言い難い。
事故による放射性物質が拡散した為に、広範囲にわたって汚染が進んだ事は事故後2年経った後でもセシウム137が遠く首都圏まで届いていることが分かる分布図を使って説明しながら、原発事故が与える社会的損失については述べていない。
説明の力点は、避難して苦労している福島県民のことや、学校が使えなくなった生徒の気の毒な様子にあり、放射線被害は人から人に移るものでは無いとか、風評被害は如何に大きな影響を与えるかと言う点に置かれており、原発の持つ本質的な危険性は説明されていない。
除染作業をすることで、放射性物質が無くなってしまうような誤解を与えかねない説明となっている。除染作業は放射性物質をその場所から他の場所に移す作業で、無くすことはできない事を説明していない。集められた汚染物質の処理方法が確立されていない事にも触れていない。
放射性物質の半減期に関する説明と図表では、セシウム137が30年である事が書かれているが、毒性の強いプルトニウム239の半減期が2万4千年である事は書かれていない。
これから福島原発で行われる廃炉作業は最低でも30年以上掛り、莫大な税金が使われる事になることや、その作業には大きな危険が伴うこと、そこから出される高濃度の放射性物質の処理方法は決まっていない事は全く説明されていない。
なにより、政府のエネルギー基本政策において今後も原発はベースエネルギーとして位置づけられており、再稼働や建て替えを計画していることには触れていないところに欺瞞がある。
次のURLでこの副読本のpdf版が読めるので、是非ご一読して自分の子供や孫がどんな教育をされているのか確かめて戴きたい。
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2014/03/03/1344729_1_1.pdf
このたび明石書店から出版された、ドイツの環境学者ワイツゼッカー博士の著書「ファクター5」には、どうすれば現在の1/5のエネルギー消費で現在の豊かさを損なう事無く、持続可能な社会が作れるかが書かれている。エネルギー消費が1/5になれば当然原発など全く必要なくなる。 |