原発停止が燃料費高騰の理由とする電力会社の発表に誤魔化されてはならない。
ブログ管理人
マスコミ各社は、日本の電力会社10社がこぞって収益が悪化したことを報じている。その理由として一番に挙げているのが原発の停止である。
電力各社は2014年3月決算を報告したが、うち6社は赤字となり北電と九電は国の支援(政策銀行からの融資)の受け入れを発表している。各社はその原因をひとえに原発の停止を理由としているが、使用済み核燃料の処理コストは各社の予算には全く反映されておらず、それは国の費用で行うものとしての原発安価説をごり押ししている。また福島第一の廃炉処理を抱える東電が黒字決算なのは、不思議と言える。
電力消費量は2010年から2013年にかけて漸増しているが、2010年を100%にした場合、その増加は106%に留まっているが、燃料費の増加は157%となっている。これは、アベノミクスとやらの円安誘導により2010年には70円台であったドル相場が現在の102円と40%も高騰したことにある。
アベノミクスとやらで円安誘導してはみたものの海外に売れる製品は自動車のみで、これまで稼ぎ頭であったエレクトロニクスは映像家電、IT関連機器、通信機器ともに国際市場で通用する製品を作ることができず、凋落の一路をたどっており、輸出額は伸びていない。国内金融緩和でだぶついたマネーで日本企業が行っているのは、設備投資ではなく海外企業のM&Aである。企業は、今後海外市場に打って出る製品が無いなか設備投資をするわけにも行かず、だぶついたお金の使い道を海外企業を買い取ることに回しているわけである。そのために国内景気は浮上せず、エネルギー消費は増えない。
また、日本の民生部門のエネルギー消費量の増加は、電力事業者が夜も発電量を調整することができない原子力発電からの電力を販売する方法として考え出された家庭用電気温水器や、オール電化の推進により著しい伸びを見せていたが、311以降国民の賢い選択が始まり民生部門のエネルギー消費も伸びが止まってきている。原子力発電をベース電力と呼んでいるが、その実は運転し始めたら出力調整も容易ではない為に、産業が電力を使わなくなる夜間は家庭の湯沸し器を動かして無理やりエネルギー消費をさせる方法をとらなければならない柔軟性に欠けるエネルギー源なのである。
とにかく、エネルギー消費が増えないのに燃料費が大幅に増加したのであって原発の停止がその原因ではない。関西電力の八木誠社長(電事連会長)は「企業として持続が困難になる場合は(再値上げを)検討せざるを得ない」と脅している。その通りでどんどん値上げをすれば、電力の無駄遣いがどんどん減り「ファクター5」が達成されることになれば、電力需要は今の1/5になり電力会社の規模も当然1/5になることになる。そこではまさか原発の必要性を説くバカはいなくなっていることだろう。
ドイツの環境学者エルンスト・ウルリッヒ・フォン・ワイツゼッカー博士の著した「ファクター5」では、現有技術のシステマティックな応用でエネルギーの消費を1/5にしても、現在の豊かさを犠牲にする必要が無いことを分野別に実例を挙げて説明したうえで、それを実行できなかった理由、市場経済の持つエネルギー依存体質、弱体化した国家が今後やってゆかねばならないこと、それには市民レベルでのエネルギー問題の理解が必要であることなどが系統的に述べられている。明石書店刊、本体価格4,200円で発売中である。 |