再生可能エネルギー ――何故、波力潮力発電は遅れているのか。
Yale360, 2014-04-28 Dave Levitonの記事から、
今日、風力発電がどのようなものか想像することはそれほど難しい事ではない。同じように太陽光発電は、屋根の上の太陽電池パネルや畑だったところに敷き詰められた太陽電池パネルを身近に見かけるようになった。ここにもうひとつ以前から再生可能エネルギーの最有力候補として挙げられていた、波力・潮力発電があるが、それがどんなものであるのか想像できる人は少ない。
風力や太陽光発電は実用化が始まってすでに20年以上が経過し、昨今の気候変動緩和策の一つとしての再生可能エネルギー源の地位を確固たるものにしつつある。波力潮力発電は、長年有力視されて数々の開発が行われてきている。波は、年中絶え間なく起きているし、潮の満ち干も止まることは無く、再生可能エネルギーとしては申し分ないと世界の科学者は研究を重ねているものの、今日に至るまで実用化されたものはなく、未だに実験段階を脱していないのが現状である。
PELAMIS波力発電と言う企業が2008年〜2009年にかけてポルトガルの沖合5kmで20MWの波力発電実験を行ったものが実績として残っている。米国の大企業、ロッキード・マーチン社は世界最大の波力発電プロジェクトをスコットランド沖に建設して62MW(約1万世帯分)の発電を行う計画である。スコットランド沖は、大西洋と北海が接する場所で常に大波が起きている。
しかし、波力潮力発電の問題の本質は、その基本的な方法さえ固まっていないところにある。巨大なヘビ状の浮体をくねらせて発電するもの、ブイ状の浮体の上下運動でフイゴを動かしタービンを回して発電するもの、海底に設置した水車を回して発電するもの、波力潮力をその場で電力に変えて送電ケーブルで陸地に送るもの、機械エネルギーを陸地に伝えて発電は陸上で行うものなど、基本コンセプトがまだ検討段階にある。
GEやシーメンスと言った、再生可能エネルギー発電設備の大手企業では、既に風力や太陽光発電では第三世代と呼ばれる段階に入り、設備コストダウン、効率アップ、保守性の向上が進められているが、波力潮力発電では、ベンチャーの開発競争の中から有力なものが出てくるのを様子見している状態で、自ら開発を行っている様子は見受けられない。
一口に言って、波力潮力発電は、風力・太陽光発電の30年前の段階にあると言える。風力・太陽光発電は1970年のオイルショック直後から開発が始まっているが、波力潮力はそれに比べ大きく遅れをとっている。
しかし波力潮力のポテンシャルは大きく英国の総電力需要の75%を供給可能であり、米国エネルギー庁の試算では、1.17テラワット時でこれは全米の1/4に匹敵するとし、開発に予算が投じられている。
原文(英文)URL:http://e360.yale.edu/feature/why_wave_power_has_lagged_far_behind_as_energy_source/2760/
ドイツの環境学者ワイツゼッカー博士の「ファクター5(明石書店刊)」によれば、現代の経済はエネルギー浪費の上に構築されたものであり、正しい方法で使うことで現在の豊かさは犠牲にすることなくエネルギーと資源消費を1/5にすることが可能であるとしており、必ずしも再生可能エネルギーのさらなる開発が必要になるとはしていない。波力潮力のようなビッグプロジェクトは、重工業が好むところであるが、開発に要する資源とエネルギーと発電するエネルギーのコストバランスを良く検討して、単に建設企業の売り上げ向上の助けとなるだけと言うことにならないように留意するべきである。 |