下水処理から出る汚泥からバイオマス燃料の標準化――国交省
ブログ管理人
5月11日国交省は、下水処理の過程で生じる下水汚泥を原料としたバイオマス燃料「下水汚泥固形燃料」の需要拡大を支援するため、今年度中に同燃料のJIS(日本工業規格)を制定する。JIS認証により品質や性能についての信頼を高め、普及につなげる。同燃料は石炭などの化石燃料の代わりに使えば二酸化炭素(CO2)を削減できるが、使用する企業などに十分浸透していないという。
国交省によると、2011年に全国で発生した下水汚泥221万8000トン(水分を除く重量ベース)のうち、燃料として有効利用されたのは1%。同省は、下水処理場などでの燃料化が進まない原因について、企業側に「きちんと燃えるのか」「製品に悪影響はないか」などの懸念があり、需要が少ないためと分析している。
日本下水道協会は既に、下水汚泥固形燃料の発熱量や水分量などを盛り込んだJIS原案を作成。同協会から規格制定を申請された国交省は、日本工業標準調査会に原案の審議を依頼した。同調査会の答申を受け、同省が14年度中に制定する。
同燃料は、愛知県の衣浦東部浄化センターや広島市の西部水資源再生センターなどの下水処理場が製造。大量の石炭を消費する火力発電所に販売している。
以上が国交省の発表であるが、この報道を読んで感じることがいくつかある。一つは、この類のシステムの効率を上げるためにはある程度の規模が重要になると言うことである。規模が小さいと効率が上がらず、採算が取れなくなり尻すぼみになる。ブログ管理者は関西電力の舞鶴石炭火力発電所で、あるプロジェクトに携わった経験がある。同発電所ではバイオマスも使用していると対外的に謳っているが、その割合は微々たるものであった。黒い石炭に木材由来のバイオマスの薄茶色のペレットがちらちらと見える程度であったので、恐らく0.1%以下であったと思う。
衣浦東部浄化センターでは一日100トンの汚泥を処理して8トンの固形燃料を生産しているが、8トンの固形燃料を作るのにどのくらいのエネルギーが消費されているのかを示す資料は見当たらなかった。規模が小さいと、8トンのバイオ燃料を作る為にそれ以上の化石燃料を燃やしてしまっている場合が多々見受けられ、実質的には環境負荷を増やしている場合がある。
次に工業標準には国際標準化機構(ISO)と言うものがある。欧州ではバイオマス燃料は以前から利用されており、標準化も現在進行中である。固体バイオ燃料規格(欧州標準化委員会TC335)として8本が既に標準化され、16本が審議中であるが、これらも本年度中に標準化される。日本下水道協会の原案がISOに準拠したものかどうかが疑問である。ここでも日本独自の標準を作り、海外から安いバイオ燃料が入ってくる事を妨害するのが目的である可能性がある。背後にNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の工作を感じる。メディアはただただ、国交省の発表を聞いてそれを垂れ流すだけでなく、その背後にある意図や作意を見つけ出して国民に知らせるという、ジャーナリスト精神で報道をしてもらいたい。
グリーン経済への移行においては、ある程度の法的規制が必要となってくる。市場の動向に任せていたのでは、エネルギー・資源の浪費は止まらないからである。ドイツの環境学者エルンスト・ウルリッヒ・フォン・ワイツゼッカー博士の「ファクター5」では、法的規制、国家と市場のバランスについても論及している。「ファクター5」は明石書店から4,200円(+税)で絶賛販売中である。 |