なぜか日本ではバイオ燃料は失敗し続けている――世界ではビジネスとして成立
ブログ管理人
バイオ燃料と言うとブラジルで行われているサトウキビをエタノールにして車の燃料としていると言うイメージを浮かべる人が多いと思うが、ブラジルのバイオ燃料政策は、森林伐採と生物多様性保護の面から問題が多いので、環境学的には評価が低い。
欧州では、既に1992年からアブラナからバイオ燃料を取り出す事がビジネスとして行われている。2000年に入ってからは、北欧、東欧、スペインを中心にアブラナ、使用済み食用油、獣脂、豆類などから大規模(年産5〜20万トン)な設備が作られ商業稼働している。これらの設備の建設あたっては殆どの場合EUから補助金が出されている。
生産されたバイオ燃料はディーゼルエンジン用として、副産物として作られるグリセリンや固形化学肥料が、いずれも販売され採算が取れるように計画されており、最近の石油価格の高止まりの為に収益が向上している。
日本には、3つの大規模なバイオエタノールプラントが農水省の補助金によって建設されているが、その内容を見ると目を疑いたくなる。北海道清水町にある北海道バイオエタノール(株)は、甜菜を原料に年間15万トンの生産をしているが、その製造原価は2009年の生産開始時には226円/リットルであったものが2012年には204円/リットルになったが、これだけ高くなったガソリン代はとても追いつかない。売れば売るだけ赤字が出るので、農水省が補てんすることになる。しかし、驚くのはまだ早い清水町は優等生なのである。
同じく北海道苫小牧市の酒造会社が集まったオエノンホールディングス(株)は、北海道産のコメを原料にバイオエタノールを年間15万トン生産しているが、操業開始の2009年には364円/リットルであったものが2012年には196円に下がっているが、これは政府の備蓄米を15円/キロで買っているからであり、もし北海道米を使うと実際には39円/キロであり単純計算では500円/リットルを超していることになる。備蓄米の購入時の価格とキロ15円には当然差損があるがそれは農水省もちである。さらにガソリン市場価格に合わせる為には補助金が必要となる。同社のホームページを見るとCRC部門もありコーポレートガバナンスを重んじる企業だと書いてあり笑わせられる。
最後に新潟市全農連が操業するバイオエタノールプラントは年産千トンと少なく、量的にはとても採算が取れそうにない規模であるが、もっと驚かされるのはここではコメを原料としているが、2012年の想定価格が304円/リットルであることと、実際には654円/リットルであることである。こんな、想定価格でそもそもフィージビリティーなどしなくてもはじめから破綻したプロジェクトである事が、素人にも解る。
なぜこんな採算性の無いプロジェクトが補助金対象事業として認められて巨額の資本を投入されて設備が作られ、エネルギーと労力を費やして操業されることになるのか、全く理解に苦しむ。そして政府は再生可能エネルギーと言うものは日本という国土や風土にはあっておらず、やはり原発に頼らざるを得ないと言い。マスコミも国民も納得するのである。
こんな無理をして再生可能エネルギーを作り出すよりも、建築物を省エネ改築することで簡単に25%程度の電力消費は下げる事が可能である。つまり政府が原発で生産しようとしている分は建築物の省エネ改築だけで達成できる。そのほかにも、農業分野、交通、重工業でシステマティックに省エネをすることで現在のエネルギーは5倍に使う事ができることを、「ファクター5」(明石書店、4,200円(税別)は提案している。 |