ダンテの森    
11 Jun 2014 06:30:08 pm
ペテン師の言葉
「平和の日に思う 言の葉・生命・こども・ふるさと」
P.E.N Vol.425 2014-5から

3月3日の「平和の日」を記念した第30回「平和の日」青森の集いが、2014年3月1日13時から青森市内で、日本ペンクラブと「平和の日」青森の集い実行委員会の主催で開催された。4組8名のリレートークが行われたが、その中から下重暁子氏+アーサー・ビナード氏のトークから抜粋してお伝えする。

■「積極的平和主義」はペテン師の言葉

下重 <略> 政治家の言葉と言うのも、一見良さそうだけれども、とんでもないというのがあるでしょう。
ビナード うまいですね。政治家は、多分、プロのコピーライターとかが作っているんだろうと思うんです。広告代理店が、政治家の演説も作るし、政府が使う、あるいは企業が使う言葉もでっちあげるし、感動物語を作る専門家もいて……。
下重 やはりおかしいですよ。安倍首相が良く使う「積極的平和主義」は、言葉自体、悪くないはずなのに、それが全然違って「集団的自衛権」の方へ行ってしまう。
ビナード 「積極的平和」という言葉がまかり通っているんですけれど、「平和ってなんだろう」という本があって、実は今日、それを持ってきたんです。岩波ジュニア新書で、刊行されたのは2009年の5月だったかな。この本の中で「消極的平和」と「積極的平和」の違いが説明されていて、著者の足立力也さんは「コスタリカという国の積極的平和の取り組み」とかいろいろ具体的に書いているんです。
下重 それはいい意味で?
ビナード これは平和学、歴史学、政治学、あるいは外交を学ぶときに出てくる大事な言葉で、学者が使ってきた専門用語なんです。「積極的平和」と「消極的平和」の違いを分かりやすく言うために、アメリカの詩人のエドナ・セント・ヴィンセント・ミレーが70年前に書いた名言を紹介します。その当時のアメリカと世界を見渡して彼女が言ったのは、「平和とは、どこか違うところで行われている、進められている戦争を知らずに、それに関心を持たずにいられる優雅な無知だ」ということです。ミレーがとりあげている平和は「消極的平和」です。
それに対して、多くの学者がこの半世紀の間に、戦争を本当になくして、表現の自由をみんなが謳歌できて、それで殺し合いの無い、大量虐殺のない世の中をつくるためには、武力衝突がない状態だけでは駄目なんだ、と言ってきました。戦争の元になる、戦争を引き起こす道具にも使える貧富の差、格差、搾取、人種差別、そしてほかの形での人を虐げる行為など、そういうものも僕らの社会から、世界の多種多様な文化の中から、やらないようにしないと駄目なんだと。そのためには、常にいろいろ取り組んでやらなきゃいけない。それが「積極的平和」「積極的平和主義」です。
下重 その本に出ている「積極的平和」というのは、とても大事な意味ですよね。それなのに、今、使われている「積極的平和」とは何ぞやと言うと、よその国が戦争をしたら、それを助けに行くという話じゃないですか。
ビナード そう。それで、よその国ってどこかと言うと…。
下重 おたくの国じゃないの(笑)。
ビナード そう、僕の母国なんです。つまり、安倍政権、安倍首相が「積極的平和主義」という言葉を口にしたときに、平和のパッケージに包んで、みんなに手渡そうとしているのが「集団的自衛権」というものなんです。こういうペテン師が作る言葉は、マトリョーシカ人形みたいに幾重にも重なっているので、「集団的自衛権とは何ぞや」とまたパッケージを剥がすと、日本の自衛隊が、僕の母国の下請け、孫請け軍として使われて、米軍が面倒くさくてやりたくないような大量虐殺とか治安維持とかをやることになる。
下重 米軍がやりたくないことをやらせるのね。
ビナード そういうことや高くつくようなことを日本にやらせる。南半球でも、北半球でも、歯止めがきかない形でどこにでも行かせる。それが「集団的自衛権」の行使の憲法解釈の見直し。それを全部「積極的平和主義」という言葉で……。
下重 ひっくるめて「積極的平和主義」と呼んでいるわけでしょう?それをうのみにしている人がいたら、「積極的平和主義」と言われると「素晴らしいじゃない」と思ってしまう。
ビナード いいイメージですからね。
下重 なぜ、そういうまやかしの言葉を使うんでしょうか?
ビナード だって、みんな引っ掛かるから、効果があるから、それをちゃんと計算して、いろいろ前もって調査して、「集団的自衛権」という言葉を使っている。でもちょっと受けが悪いからもう一つパッケージに包もうと……。
下重 「積極的平和主義」にしようと……。
ビナード 「積極的平和主義」って、この本で足立力也さんが書いていた意味が飛んじゃったよね。言葉を乗っ取ることができる。どうしてかと言うと、大手マスコミも政府も、みんなそれに協力するから、市民がそれに対して抵抗しない。文学者も抵抗しない。
下重 言葉にごまかされちゃいけない。オブラートに包んだ言葉で怪しい言葉が、今は山ほどありますよね。これはおかしいなとか、なんか変だなと感じるのも、自分の感覚だと思う。でも、あんなに機械に命令されている感覚の中で生きていたら、感覚がないから気が付かない。
ビナード そうですね。自分で言葉を常に観察して表現していると、匂いでわかるんです。常に食材を扱って料理している人、あるいは常に畑仕事や漁をして関わっている人は、匂いをかげば腐っているか新鮮かはすぐ分かる。賞味期限なんか要らない。すぐ分かる。言葉も同じなんです。常に使って料理していれば、「これはうさんくさい」「これはうそっぱち」「これはちゃんと根っこが付いていて滋養豊かな言葉だな」という区別ができるようになる。
下重 自分の感覚と、それからの心の中をきれいにして、純粋にして、ちゃんと感覚で感じられる人、考えられる人にならないといけない。<以下略>
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