6月14日にファクター5の出版記念会を開催しました
ブログ管理人
ブログ管理人とその仲間が翻訳して去る3月25日に明石書店より出版された「ファクター5」の出版記念会が、主催:明石書店、共催:一般社団法人 環境未来研究会として開催された。
この会の主賓で「ファクター5」の監修者である名古屋大学環境学研究科、持続的共発展教育研究センター長・教授の林良嗣教授は本書の発刊の意義について次のように語った。
日本語版ファクター5は、原書の英語では無くそれに原著者自らが手を加えた改訂版と言えるドイツ語版から訳されている。今回翻訳にあたった訳者は、ドイツ企業やドイツの経済団体などで長年勤務した経験から、ドイツや欧州での生活経験も有り、欧州の文化や歴史を深く理解した人たちで、素晴らしい翻訳ができた。実は、ここまでの成果は期待していなかった。又、各所に書かれた訳者注釈は専門家も舌を巻くほどのもので、翻訳家の努力が見て取れた。
原著者のエルンスト・ウルリッヒ・フォン・ワイツゼッカーは、統一ドイツ初代大統領のリヒアルトの兄で高名な物理学者カール・フリードリッヒを父に持つ学者の血筋の家柄の出身である。彼は、生態学から始めたが、現在の彼は「地球エコシステム政治経済学」と言うこれまで無かった学問領域に達している。もともと理系であった彼が、エコロジーに進み、政治の世界も経験し、環境税と言う考え方を提案するに至った。
彼が最初に出版した本は「生物化学兵器と平和」で続いて出したのが「技術と情報の進化」と言うもので初めから全地球的規模、全人類的テーマを取り扱っており、20世紀後半の戦後から経済復興により生じたエネルギー大量消費経済による環境破壊に警鐘を鳴らし、次の世代に地球環境をどのように引き継ぐかの具体策を示した。
本書「ファクター5」にはエフィシェンシー(Efficiency、効率)からサフィシエンシー(Sufficiency、満足度)への移行を訴えるものであるが、このサフィシエンシーの元になっているドイツ語ゲヌークザムカイト(Genügsamkeit)を本書では「足るを知る」と訳している。恐らく、この方が本来のドイツ語の意味にぴったりくると訳者は思ったのであろうが、この「足るを知る」と言う言葉が使われたことで、我々日本人の環境に対する役割が俄かに見えてきて、本書が出版された意義が明確になってくる。
最後にワイツゼッカーの友人であるハンス=ペーター・デュル博士について一言述べたい。デュル博士はアインシュタイン、ハイゼンベルグの流れを継ぐ核物理学者であるが、哲学者としても高名で、宇宙と生命の根底には共通したものが流れていると言う考え方で、ものごとを考えれば自ずと環境問題は解決すると言う思想を提唱していたが、2週間前にこの世を去った。ご冥福を祈るものである。ドイツに現れたこの二人の巨人と接する事ができた私たちに与えられた使命は大きいと感じる。これを持って「ファクター5」出版記念会へのお祝いの言葉としたい。(要約)
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