環境の悪化が人間の健康に脅威をあたえはじめた――WHO
スイス、ジュネーブ2014年5月20日ENS-Newsより
「我々の惑星は人類の生命を保持し続ける能力を失いつつある」世界保健機構(WHO)の議長マーガレット・チャン博士はジュネーブで開催された世界保健総会の席上訴えた。
先に発表されたIPCCの第5次評価報告書にあるように、人類が地球環境に与えた負荷は大きく現在の気候変動が人類の産業活動に起因する事は、ほぼ確実であると、執筆した数百人の科学者は認識しており、国連はその考えを支持している。
WHOも3月に発表した、大気汚染が与える健康被害に関する調査結果でも状況が悪化している事が報告されている。
2012年には約700万人が大気汚染の為に死亡しているが、大気汚染は環境による死亡要因の最大のものであると、チャン氏は述べている。
環境の悪化は、4つの微生物による疾患を起こしているとチャン博士は述べている。その第一は、ギニアを中心に広まっているエボラ出血熱でこの疾病は感染力が強く死亡率が高い、次の2つはH5N1とH7N9のインフルエンザ・ビールスで、4つめは中東で広まりつつあるコロナ・ビールスである。
これらの疾病に共通しているのは、WHOの報告書に指摘されているようにいずれも、高菌薬耐性を持った微生物であると言う事であり、このような微生物が増加傾向にあることである。
世界保健総会の専門家会議において議論されたのも、きれいな空気、安全な飲料水の確保、疾病発生時の隔離施設の充実についてであった。
第67回国連世界保健総会は、キューバの保健相であるロベルト・トーマス・モラレス・オヘダ博士を議長に選出、各地域を代表してバーレイン、コンゴ、フィージー、リトアニア、スリランカから5人の副議長が選出された。
会議のゲストスピーカーとして招かれたビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団のメリンダ・ゲイツは、新生児の保護を訴えた。多くの新生児の死亡は防ぐことが可能であるとされているが、それにもかかわらず年間300万人が出産後28日以内に死亡している。WHOによると年間260万の死産が報告されているとする。そのうち100万人以上が出産時に死亡している。
WHOが発表した2014年版の世界ガン報告によると、過去最大の新生物数が記録されこの数は増加の一方であるとしている。世界経済における、ガン治療に支出されている医療費は2010年において1兆2000億ドル(120兆円)であったとしている。ガンによる死亡の70%は開発途上国のものであり、その殆どは何の治療を受けることもなく、終末医療もペインクリニックを受ける事無く死亡に至っている。
所得格差が医療を受ける事ができない人たちを作っている。今世紀に入り貧困の世界地図は塗り替えられた。現在、世界の貧困人口の70%は中程度の所得が有る国に存在している。国が中程度の所得を得るようになると、医薬品の価格が上昇し貧困層は購入する事が不可能になってしまう。WHOは医薬品の販売価格に対する監視を強めようとしているが、いかなる場合にあろうと、人々が購入できないような価格で医薬品を販売する事はやめるべきであるとしている。
先進の一部の経済学者が述べているように、経済成長のみを追い求める市場経済は既に陳腐化しているとすれば、そこから脱皮した新しい経済システムでは、人間の最低限の健康と尊厳を最優先に考える経済にしなければ持続可能な社会とは言えないとチャン議長は訴えている。
原文(英文)URL:
http://ens-newswire.com/2014/05/20/deteriorating-environment-threatens-human-health-worldwide/ |