ダンテの森    
06 Jul 2012   05:58:30 am
GHGの18%は農業から
工業化された農業は環境破壊の最たる存在

 農業がこの小さな地球と言う惑星上に70億人もの人間の生存を可能にした。

 何千年にもわたって太陽光のエネルギーだけを使って食糧に変え、文明を支えて来た伝統的な小規模な農業にあっては、作物以外にも小動物や他の植物にとっても小さな農地は祝福すべき存在であった。

 ところが人口が爆発的に増加し、更なる発展と快適性を追求した人類は、産業革命により習い覚えた地下資源を利用する方法で農業を工業化して行った。そして農業は現在、地球温暖化ガス(GHG)の18%を排出し、地球表面の淡水の70%を消費する環境破壊の大きな要因となってしまった。

 その一方で、農業は地球温暖化による気候変動の影響を最も受けやすい分野でもある。地球温暖化によりますます狂暴になってきた気候は、多雨性の地域では洪水となり、乾燥地域では旱魃の頻度が増している。そしてこれらの地域は最貧国でもあり、弱い立場の人達が最もひどい仕打ちを気候変動から受けている。

 大規模農業が無尽蔵に使う淡水、農薬、化学肥料、これらを使うために使われるエネルギーは莫大である。ファクター5では農業用水の使用を95%少なくする技術点滴灌漑農業等を紹介している。点滴灌漑農業では肥料は最大99%節約できるので、化学肥料メーカーやそれを販売する商社や農協は、おいそれとは賛成しない。電力会社が原発をやめないのと同じ図式と言える。グリーン経済への革命的移行が難しい理由がここにある。
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05 Jul 2012   05:58:31 am
環境改革税の導入
消費税を上げるのにやっとの日本政府には環境税は高根の花

 7月1日からオーストラリアは炭素税(環境税)が決定され、ギラ―ド首相は産業界からも国民からも不満の声が多く、政治生命まで危ぶまれているが、その勇気に拍手を送りたい。先日、すったもんだの揚句の果にやっと消費税増税が1年半先に実施される事になった日本には、環境税を担ぎ出す勇気のある役人も政治家もいないであろうが、地球環境の為、持続可能社会建設の為には必要な税である。

 エネルギーを使用する、CO2を排出する、他の理由で地球環境を傷めるものには環境税を課す政治的決断が必要である。
OECD諸国では既に環境保護を目的とした課税制度が各国ともに存在する。殆どの国でSO2等有毒物質を排出する企業に課税することから始まった課税制度や、排水、産業廃棄物に対する課税制度がある。国によっては原材料、淡水使用あるいはフィラメント電球使用に対する課税もある。排水税は下水処理施設の整備に充てられる場合が多い。

 燃料税は昔、自動車がまだぜいたく品であった頃に始められたもので、道路建設や整備に充てられている。環境保護を目的にした環境税は1990年代から始っている。

 図はOECD諸国の環境税を表している。アメリカ、カナダ、メキシコが1%代からスカンジナビア、オランダ、トルコが3〜4%である。

 環境税は、環境保護の財源となることも重要であるが、課税される分野の企業による環境対策が促進される効果が大きい。ドイツが排水に課税を決めたのは1976年で実際に課税が開始されたのは1980年からとなっていたが、この間に企業は排水を出さない対策を講じ実際に課税対象となったのは僅かであった。これは財務省をがっかりさせたが、その為に設備投資が発生し経済産業省は喜び、環境にとっても良い結果となった。これは環境税のありかたに示唆を与えるものである。

 環境改革税とも言える光源を省エネ光源に転換する事を推進する目的で、デンマーク、ラトビア、リトアニアとスロバキアが導入した電球税は画期的であるが、その他の国に目立った動きが無いのは残念なことである。

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04 Jul 2012   12:31:20 pm
自然から学ぶ
特に西欧社会にとっては新しい価値基準「自然」

 バイオミミクリ―と言う言葉はアメリカのサイエンス・ライター、ジャニン・ベニュスが提唱する「自然から学ぶデザイン」の事である。

 最もその有名なものは日本の新幹線技術に取り入れられている例である。時速300kmで走行する時に発生する騒音やトンネル突入時に発生する衝撃波の問題をフクロウとカワセミから学んだと言うものである。

 新幹線は市街地に作られた専用軌道上を高速で通過するためにその発生騒音は75dB以下であると決められている。これは家庭用掃除機が発する騒音と同じである。新幹線走行での最も耳障りな音はパンダグラフ(天井に付いている電気を集める為の弓状の装置)の風きり音である事が分かった。JRの研究者はフクロウが地上の飛翔動物の中で最も静かである事に着目してフクロウの羽を真似てパンダグラフの風きり音を小さくした。又、カワセミが空気中から水中の獲物を狙う為にダイブをする時に全く水しぶきが上がらない事を真似て新幹線の先頭車両のデザインを行いトンネル突入時の衝撃波の発生を防ぐことに成功した。

バイオミミクリ―の3つの原則は次のようである。
1.自然をお手本とする。
 バイオミミクリ―は自然のお手本を研究し真似るか、問題解決の手法として取り入れる、例えば太陽光パネルを幾何学的に並べるだけでなく、木の葉をまねる事を研究すると言うような、新しい科学分野である。
2.自然を尺度として考える。
 バイオミミクリ―では新技術の評価を、自然に現存するものは38億年間にわたる改良の結果で、正しいものであるとして、機能性、最適性、耐久性の評価を行う。
3.バイオミミクリ―は新しい自然への知覚と尊敬である。それは我々が自然から何かを得ようとするのではなく、自然に習おうとする新しい時代の幕開けである。

 ジャニン・ベニュスのプレゼンテーションが今話題のTEDで見ることができるので、次のURLを紹介する。プレゼンは英語であるが、このサイトに全文の和訳が付いている。

http://www.visualecture.com/wordpress/?p=1430
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03 Jul 2012   08:09:06 am
ドイツの反原発運動
市民運動なしには原発は無くならない。

 先日テレビでドイツの反原発運動の話しを見た。ドイツ南部黒い森のシェーナウ(Schoenau=美しい谷)と言う当時人口2500人の町で起きた原発反対運動の話である。主人公はこの町の教師で3〜12歳の5人の子供の母親のウルスラ・スラーデク(Ursla Sladek)さんである。

 1986年チェルノブイリ原発事故が発生、放射能はドイツにも届いた。その年のシェーナウの野菜の収穫は放射能汚染の為に全て廃棄された。母達は汚染されていないミルクを求めて遠くまで走り回った。スラーデクさんを中心に10人の親達で「原子力の無い未来を求める親達の会」をつくった。彼らはまず、原子力とは何かから勉強をするために専門家を招いて猛勉強を始めた。その結果、原子力に頼らない社会づくりを目指す。

 つぎに原子力発電からの電力を使わなくしようと、節電運動を始め町全体で10%の節電を達成した。すると、電力会社から「営業妨害」だと文句をつけられた。それでは自分達で電力会社を作れば良いと、電力会社作りを計画して住民投票にかけた。結果は54%で賛成多数を得て実行となった。市民から募金を募り電力会社から送電設備を買い取る2億円の資金をやっと集めるが、電力会社は4億円だと言う。

 それではと、全国に訴えて資金を募った。その時のキャンペーンのスローガンが「私は厄介者です。(Ich bin ein Stoerfall.)」このフレーズで新聞やTVスポットを流し話題をさらった。写真と実名入りで「私は厄介者です。」と原発廃止を訴えた。資金も集まり1997年にEWSと言う電力会社を立ち上げ、原発に由来しない電力のみで町に電力を供給しはじめた。

 翌年1998年にはドイツでは電力の自由化となり、EWSには全ドイツから原子力に由来しない電力を買いたいとの申し込みが殺到する。2012年現在契約者数は13万世帯になっている。電気料金は他の電力業者より10%高いが、電気料金のうち5%は省エネ技術や、再生可能エネルギーの開発の為に出資されている。スラーデクさん達は2011年度のゴールドマン環境大賞を受賞している。

 2011年3月、メルケル首相はそれまで原発の稼働年数を延長する事に決めていた方針を撤回し、2022年までに全原発の停止を決定した。これは福島原発の事故を受けて全ドイツに数10万人の原発反対のデモが起こり、直後のバーデンヴュルテンベルグ州(シェーナウがある州)の地方選で与党のキリスト教民主同盟(CDU)が大敗したのを見て取った処置である。大飯原発の再稼働に反対するデモが報道されたが、これから日本も反原発運動が広まって来るのだろう。ドイツより26年遅れたがこれから始まる予感を覚えた。
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02 Jul 2012   06:11:36 am
先進国を真似ないで
発展途上国は即刻ジオポリマーセメントに切り替えるべき

 当ブログでは、製造時に大量のCO2を発生するポートランドセメントに代わるものとしてジオポリマーセメントを2011年の8/20, 9/7, 11/17, 12/11に紹介した。ジオポリマーセメントは現在一般にセメントとして使われているポートランドセメントに較べ80%も製造時のCO2の発生量が少ない。

 このセメントはアルミニウムシリカ・セメントとも呼ばれ、アルカリ活性化した火山灰、高炉スラグ、フライアッシュ、カオリナイト、金属成分を含むスラグ等を原材料に作られる。ポートランドセメントの製造工程で石灰石を1350℃の高温で焼結する時に石灰石から放出されるCO2と高温を得るために燃やす燃料からCO2が大量に放出されるが、ジオポリマーセメントでは原材料の一つである水ガラスと苛性ソーダの製造時に多量のエネルギーを消費する為にCO2の放出があるだけで、ポートランドセメントに較べると80%の省エネになる。

 ジオポリマーはアルミニウムシリカの粉末とアルカリシリカ溶剤の化学反応により作られる。古代エジプト人やローマ人はアルミニウムシリカ粉末は火山灰を使った。産業革命の発祥の地であった英国には火山灰が無い為に、たまたまポートランドに豊富にあった石灰石を使ってセメントができないものかと考えられたのがポートランドセメントでそれが世界中に広まった。

 製鉄所から出る高炉スラグや石炭火力発電所から出るフライアッシュも原料になる。日本やドイツにおけるこれらの産業廃棄物の再利用はかなり進んでおり、高炉スラグは日本では50%、ドイツでは88%が、フライアッシュは日本では80%が、ドイツでは25%がすでに特殊セメントの材料として使われている為か、日本とドイツのセメント業界はジオポリマーセメントへの転換の機運は無い。日本ではコンクリート建造物の寿命は50年と言われてビルの建て替えが行われているが、ジオポリマーに変えると建造物の寿命が数百年にも延びるのは、建設業界やセメント業界にとって好ましくないからと言うのは、穿った見方と言うべきであろうか。

 現在、世界で最も大量のセメントを使用しており、今後も2030年までは消費の増加が続くとされる中国とインドでは、高炉スラグもフライアッシュもほとんど再利用されることなく廃棄されている。中国の石炭火力発電量は世界一で大量のフライアッシュが出ているのにかかわらずである。

注)フライアッシュ:石炭火力発電所では石炭を小麦粉の様な粉末にして少量の水と混ぜてバーナーから噴霧して燃やす。燃えカスは細かい灰でフライアッシュと呼ばれる。
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