ダンテの森    
05 Sep 2012   10:24:49 am
経済界からの反論
既得権益を守ろうとする声は強く、大きい

 ファクター5が掲げる、エネルギー効率が上がりエネルギー消費が減少した分に見合うエネルギー価格を上昇させることで、消費者が受ける同一サービスに対する同一価格制度を導入する事で継続的に資源価格を上昇させ続けるべきであるとする考え方は、世界中の経済界や資本家から強い反対を受けるであろう。経済界では常に、現在大きな権益を得ているものが必要以上に強い発言権を持っているものである。

 国際的に見て高いエネルギー価格となっている日本でも、環境問題の対策として政策的に高水準になっている訳では無いので、その事情は同じである。

 省エネの成功により売り上げが下がる企業が有る事は確かであるが、利益を増加させる企業の方が多くなる事が分かっていても、従来の権益を守ろうとする声の方が強く、大きい。環境税や資源価格の上昇に対して経済の後退を懸念する風潮は世界中に蔓延している。

 アメリカで行われた労働者に対する世論調査では、33%の回答者が環境問題対策による改革により職場を失う心配が有ると答えている。しかし、この心配には確たる理由は無く、省エネは景気を後退させるからと言う漠然とした思いこみが一般的になっていることから来ている。

 実際に、環境対策を講じた企業で人員整理が行われた例は少ない。全米で毎年発生する100万人単位の解雇の主な理由は、消費者傾向の変化による販売の悪化、世界的な価格競争に対応しきれず規模を縮小するなどで解雇に至るものがほとんである。

 環境対策は省エネであり、省エネは景気の後退=雇用の減少との図式がまかり通っている。これは、既得権益を守ろうとする集団が、ひとかけらたりとも自らの取り分を失いたくないとする考えから出ている。

カテゴリー : Factor Five | Posted By : dantesforest |
04 Sep 2012   10:58:11 pm
米大統領選と環境
Boston MA 2012-08-23 ENS

ロムニー氏のエネルギー政策は20年前に戻そうとするもの

 共和党大統領候補のミット・ロムニー氏は8月23日エネルギー政策を発表した。それによると、石油、ガス、原発を推進する一方再生可能エネルギー予算はカットするとのことである。ロムニー陣営によると、これにより300万人の雇用を増やし、1兆ドル(87兆円)のビジネスが増え、北アメリカのエネルギー政策を海外依存しないものに転換するとしている。

 メキシコ湾のBP深海油田事故を受けて、開発が停止されているノースカロライナ州とバージニア州沖の油田開発を再開するとしている。また、自然環境と動物保護の観点から米国議会の決定により25年間停止されていた、アラスカ沖の海底油田の採掘も再開するとしている。

 オバマ大統領の報道官Jay Carney氏によると、この発表は共和党が100%オイルアンドガスに依存している事の現れであり、これこそ民主党を大きく異なる点であるとしている。

 ロムニー氏は、まずエネルギー政策における規制の撤廃とエネルギー関連の政府機関の縮小をして政府のスリム化を行うとしている。また、空気浄化法の改定を行う必要があるとしており、その理由として、石炭、石油、ガス等の化石燃料を燃やす事によって出されるCO2は、地球を取り巻いて、太陽光エネルギーから地球が温暖化することを防ぐ効果があると言うものである。(かつてアメリカはこの主張でIPCCの地球温暖化が人類の営みに依るものとする考えに真っ向から反対した。)

 オバマ大統領はニューヨークの有権者を前に「ロムニー氏が望む未来は、我々が子供や孫たちに引き継ぎたいと思う未来では無い。」と語った。

 ロムニー氏のエネルギー政策はアメリカを20年前に引き戻そうとしている。

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03 Sep 2012   10:18:19 pm
双子の温暖化
地球温暖化とヒートアイランドの両方が襲っている

 今年は例年になく残暑が厳しい。地球温暖化で地球全体の温度が上がっているが、大阪、名古屋、東京などの大都市では、これとは別にヒートアイランド現象で更に気温が上昇している。東京において過去100年に3.0℃の気温上昇があった。

 プリンストン大学の眞鍋淑朗教授のシミュレーション(図参照)によると、2070年には、記録的猛暑と言われた2010年のような状態が8月の平均となる。

 2000年代には厳重警戒温度(31〜35℃)、これは熱中症の危険が高いので激しい運動や持久走など熱負担の大きい運動は避ける。運動する場合には積極的に休息をとり水分補給を行う、体力が低いもの、暑さに慣れていないものは運動中止と言う気温であるが、8月中に112時間であったものが、2070年の8月には245時間に増加する事を意味している。

 また、深夜0時の気温が26℃以上になると睡眠障害が多発するとされるが、その時間が2000年代の8月では200時間であったものが、2070年には320時間となる。

 現在のようなCO2排出、つまりエネルギー消費が続けばこのシミュレーション通りとなり都市部で夏を過ごす事は生命に関わるリスクを含むことになる。
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02 Sep 2012   03:47:44 pm
電力料金の値上げ
ファクター5が主張する資源価格の上昇とは異なる

 昨日(9月1日)から電気料金が値上げになった。ファクターファイブでは資源の価格は安すぎるので、法律で定めてでも上げる方向に進める事は望ましいことであるとしている。但し、ファクター5の主張はまず、ある分野における省エネが成功して一年で10%の節約ができたとして、翌年にその分野の資源の価格を10%値上げすることで、消費者にとっては同一サービスを得るために掛る金額は同じと言うことになり、追加の負担は発生しない。これは「リバウンド効果」を防ぐのが目的である。

 日本の電力料金の場合は少し事情が違う。今回の値上げの問題の本質は電力料金の設定方法にある。電力業界の値上げの理由は、これまで原発の電力製造原価は低かったが、3.11以降原発が使えなくなったので、石油と石炭の輸入コストが嵩んで原価を押しあげたとしている。ここには問題が2つある。一つ目は原発のコストが安いとしている嘘である。原発原価には使用済み核燃料の処理費用が含まれておらず、これを加えると石油よりも高くなる。2つ目は、消費者が節電をして電力使用量が減る事は、電力料金の値上げになる料金体系である。

 現在の法律では電力会社は発生した製造原価に管理経費と会社の利益を加えたものをすべて料金に転嫁できるようになっているシステムだからだ。もし、これから、消費者が、どんどん省エネをして平均で20%の電力使用が下がるとする、そうすると電力会社の売り上げが20%下がる、普通の企業で有れば売り上げが下がれば、規模を縮小し、人員を減らしてコストを下げて対応する。電力会社は法律で守られていてそれをする必要が無い、売上が下がれば、料金単価を上げれば良いのである。ファクター5が主張する資源価値を継続して上げ続けるのは決して電力業界を守るのが目的では無い。欧州では20年も前から電力は自由化になっており、電力会社は熾烈な競争下にあるので日本のような事が起きるようなことには考慮されていない。

 日本の電力業界は、発電と送電の切り離しと販売の自由化を進めて競争状態を作る事が必要である。自由化すると停電が起きるなどと言う事言う人が居るが、アメリカ西海岸で自由化された直後に起きた事を取り上げて未だにそれを理由にしているだけで、その後はどこにも自由化した事による停電は起きていない。

 これまで、豊満な経営に甘んじて、安全対策すら怠っている電力村の既得権益を守る必要は全く無い。

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01 Sep 2012   09:45:05 am
せっかちすぎる人類
長い時間のスパンでサイクルを繰り返す自然

 世の中に存在する物質は全て、濃縮―拡散―濃縮―拡散の流れを繰り返している。それが、水であれ、鉄であれ、木であれ、プラスティックであれ同じである。ぼくたちが手に触れる事ができるのは濃縮している段階である。水は濃縮された状態で手に触れる事ができるが、拡散すると水素と酸素になって手で触れることはできなくなるし、目でも見えない。

 金属は何億・何千万年と言う悠久の時を掛けて濃縮されて金や鉄になっている。木は何百年掛けて炭素と水素を太陽光の力をもらって濃縮して木を作る。木の分子構造はものすごく複雑で、写真(上)の白い色の部分でセルロースとへミセルロースで出来た籠状のものである。この分子をつないでいる接着剤の働きをしているのがオレンジ色のリグニンである。リグニンがたくさんの籠をしっかりつないで100メートルもの高さの木を作っている。この構造は伐採された後も変わらず、法隆寺の心柱のように1200年も塔を支えている。

 人間は木を使いやすい形に切って加工して家や家具を作る。そして使わなくなると燃やしてしまう。また紙として使う場合はセルロースだけを取り出して紙にして、使い終わるとそれも燃やしてしまう。焼かれた木材や紙は炭素と水素に拡散して大気の中に溶け込む。

 木のサイクルは自然界では数100年単位であるが、人間が使うと紙なら数年、材木としてでも数十年のサイクルで有る。この時間の流れの違いに人類はこれまで思いをはせる事が無かった。金属は数億年、化石燃料は数百万年と言う悠久の時間を掛けて濃縮されたものである。それを人間は数年で拡散させてしまっている。ここに持続可能では無くなる原因がある。人間は余りにもせっかちで有る。最近の企業は1四半期毎の決算の数字が重要で、もう人間の生活サイクルよりも短いサイクルで経済活動が動いており、持続可能な社会からますます遠ざかる傾向にある。

 三重大学の舩岡正光教授は、リグニンを分離する技術を開発し、リグニンとセルロースを混ぜて常温で固まる木材プラスティック(写真下)を開発した。この木材プラスティックは分解して再び別の形に成形する事ができ、木材を長期間使い続ける事ができ、少しでもサイクルを延ばす事ができる。

未来館のホームページ
http://www.miraikan.jst.go.jp/sp/deep_science/topics/18/01.html
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