ダンテの森    
27 Jun 2012   04:23:27 pm
資源効率改善の歴史
資源効率アップと消費拡大は産業革命の双子の兄弟

 産業革命は英国から起こりありとあらゆる産業分野にわたり、またたく間に世界中へと広まった。70億人分の食料を生産する農業も例外ではない。70億と言う数字はマルサスにもジェボンズにも想像を絶する数字であろう。

 石炭の埋蔵量はいまだにピークはむかえていない。そして、我々はやはり人類がいくら資源の効率を上げても、効率が上がることで消費がさらに進みいずれは成長の限界に突き当たると言うジェボンズのパラドックスを認めざるを得ない。もっとも資源の枯渇よりも先に地球温暖化による限界の方が先におとずれる事になるであろう。

 ブーメラン効果というのは人類が工業化をはじめたときから副産物のようについて回るものであったのかもしれない。ジェボンズのパラドックスは、人類の長い歴史の中で産業革命以降の現象を事後評価しただけであったと言う事ができるかも知れない。

 人類は自然を利用することを知り、資源をより効率よく使う事で人口の増加に対応してきた。人類は狩猟と採集をすることでそれ以前の状態から進化した。しかし、狩猟と採集だけでは地球上に数百万人がやっとである。その後、農耕と牧畜を学習した事で同一面積から10倍もの収穫を得ることができるようになった。

 しかし、人類は生産効率の上昇よりも速い速度でその収穫物を消費する方法を見つけ出した。そうして人口は数百倍となり肥沃な土地を対象に部族間での戦争が起きるようになった。人類は定住するようになり、文化が芽生え、分業による職業が生まれた。村、町、都市、国家が形成され、指導者階級も形成された。エリートの存在はそうでない人々にとって羨望の的であった。この社会格差が上昇志向を原動力とする学習意欲や勤労意欲を盛んにして、結果として産業の発展をけん引することになった。

トマス・ロバート・マルサス(Thomas Robert Malthus、1766年2月14日[1] - 1834年12月23日)は、イギリスサリー州ウットン出身の経済学者。古典派経済学を代表する経済学者で、過少消費説、有効需要説を唱えた人物として知られる。

ウィリアム・スタンレー・ジェヴォンズ(William Stanley Jevons,1835年9月1日 - 1882年8月13日)は、イギリスの経済学者・論理学者。著書『経済学理論』

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26 Jun 2012   05:57:51 am
進まぬコージェネ化
いまだに拡大を企業目標に掲げるエネルギー業界の愚かさ

 大規模な電力と熱源を必要とする重工業においてコージェネは理想的で最も簡単に実現できる解決策である。重工業では電力も熱源もほぼコンスタントに使用する為に、ボイラーを停止したり運転したりして効率が悪くなる事も無く高効率で運転ができる。当然、鉄鋼、アルミニウム、セメント、製紙、印刷、化学、食品製造、石油精製などの重工業は全てコージェネになるべきであるが、現実は世界で8%しかコージェネ化されていない。

 デンマークはコージェネ先進国で2003年に52%をコージェネ化した。アメリカはコージェネ発電量は85GWでトップであるがわずか10%にも満たない。ドイツは2005年に13%になったが、政府は57%を目指している。

 重工業分野で最も簡便に実行可能な省エネであるのにかかわらず増加率が低いのは、電力会社が大口需要家が離れるのを恐れ大口需要家向けの電力料金を値下げしてコージェネへ逃げるのを引きとめているのが一要因と考えられる。電力会社はその為に一般家庭向けの電力料金を吊り上げて収支のバランスを取っている。

 電力会社は電力をより多く売る事から脱皮し、徐々に供給電力を少なくして行く事を企業の目標と転換することが、グリーン経済への移行に適合することに気づくべきである。エネルギー業界は縮小をその企業目標に掲げる時が来ていると気づくべきだ。
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25 Jun 2012   05:59:20 am
火力発電とコージェネ
コージェネはどうして効率的か

 また、暑い夏がやってくる。昨年は計画停電さわぎで大変であったが、今年はどうだろう。電力会社の発電所以外にコージェネからの電力が相当あると言う報道があったが、コージェネは何故効率が良いのだろうか。

 火力発電所のエネルギー効率は悪く投入した燃料の熱量の35%しか電気として最終ユーザーに届かない。家庭で1000Wのエアコンを使うと遠く離れた火力発電所では2849W分の石油、石炭、天然ガス、バイオマス等を燃やして発電する事になる。発電所の変換効率は39%で1111Wの電気を発電する。1738W分のエネルギーは排熱として海水を暖め、煙突から逃がして大気を暖めている。その後、変電所や配電網を通るうちに更に約10%の111Wが失われる。

 一方、大工場では必ず熱源が必要でその為に蒸気ボイラーで熱水を作って必要な部署に送っている。最近のハイテクボイラーは高効率で90%の熱効率がある。

 コージェネレーションはこの工業用ボイラーでまずタービンを回して発電をする。発電した電力は長距離送電のロスもなく、電力会社の管理費も掛らない為に大変安くなる。タービンを回し発電を終えた蒸気はまだ十分熱く工業用の熱源としては申し分が無いのでそのまま使える。つまり、工場内で熱源と発電を兼ねて行う事で効率が50%以上良くなると言うものである。

 図では右側のコージェネに100の燃料を投入して得られる50の熱源と39の電力を得る為には電力会社は130の燃料を投入し、工場用ボイラーには59の燃料が投入されなければならずその合計は189となることを表している。

 電力会社の料金体系は大口需要家には、コージェネの安さに対抗する為に安い料金を設定し、そのぶん家庭の電力料金を高いものにしてバランスを取るようにしている。

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24 Jun 2012   07:18:06 am
自然から習う
自然界のものづくりを真似るのがバイオミミクリ―

 下水の処理にバクテリアを使うのはバイオテクノロジーである。自然界からものの作り方を教えてもらうのが、バイオミミクリーである。なぜ海の中で貝ができるのか?なぜ口のなかで歯ができるのか?自然は大気と水と太陽光だけから全てのものを作って来た。地球上には38億年に亘って開発された数千万種類の製造技術があり、今なお開発は続いている。

 人類は過去200年間別の方法でものを作って来た。ものを作る為に膨大なエネルギーを使って来た。太陽光では足りないので地下から石炭や石油やガスを掘り出して燃やしてその熱を利用して来た。人間が製造する場合、熱する、鍛える、処理をする、と言う工程で高熱、高圧、化学薬品を使う。人間が貝や歯を作ろうとすると炭素、ケイ素、カルシウム等を高熱で焼結させてセラミックを作る。

 ボーイング787はカーボンファイバーでできている為に20%の燃費が向上したが、このカーボンファイバーを1トン作るのに20トンのCO2が出る、つまり7トンの石油を使って、高温と高圧でつくるのである。クモはこのカーボンファイバーよりも強靭な糸を常温で作る。そして、自然がつくるものは年月が経つとすべて分解されるが、人間の作るものはぶざまな姿のままゴミとなる。自然の設計図にはゴミはない。

 4000年前の古代エジプト人はジオポリマーセメントと言う常温で固まるセメントでピラミッドと言う巨大建築を作りその技術は、2000年後にローマでコロッセオなどの建築物に受け継がれた。しかし、200年前に人類はその技術を捨てて、石灰石を1450度と言う高温で焼結させて作るポートランドセメントに変えた。この膨大なエネルギーを消費するセメントで作ったコンクリートの寿命は50年だと言う。50年経ったら壊して新しいコンクリート建築を作ると言う設計図だ。これが現在の経済を支えているとしたらこの経済は間違っている。

 リオ+20ではメインテーマのはずであったグリーン経済への移行については余り討議されなかったようだ。開発途上国は貧困を無くすのが先決だと耳を貸さなかったからだ。彼らは豊かになる為にはエネルギーが必要で、彼らにもその権利があると主張した。決議書には、「グリーン経済への移行も方策の一つである」とだけ書かれた。まず先進国がやって見せなければ説得力がない。
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23 Jun 2012   01:04:03 pm
部分乾燥灌漑
点滴灌漑よりさらに水を使わない農業

 農業はGHG(地球温暖化ガス)排出量の18%と淡水消費の70%の環境負荷を与える分野である。GHGの排出要因の80%は農業用水を確保する為に消費されるエネルギーを作る為に出されるものである。更に、淡水資源は後10年で危機的な状況になることが2006年に国連環境計画(UNEP)から報告されている。

 点滴灌漑については本ブログで再三取り上げている(2011.9.19-20他)が、点滴灌漑を更に効率を上げる方法が部分乾燥点滴灌漑である。これは、一部にわざと水を送らずに乾燥させると言うものである。

 作物の列の奇数列と偶数列を交互に一定期間灌漑すると言うものである。その期間や水量は作物と気候により異なるが、数日間から数週間のサイクルで交互に水を送る。

 根が乾燥し始めた作物は危険を察知して葉の表面にある蒸発孔を閉じたり、背丈を伸ばす事を停止したりの対策を講じ始めるという。同時にこの情報を近隣の同種の作物にも伝達するらしい。その情報は現在灌漑を受けている作物にも危機管理の為の準備を始めさせる。一定期間の後、水が戻ってくると作物は水を今までよりも効率よく使い次の乾燥に備える。乾燥し始めた作物は既に情報を持っているので、すぐに対策を講じる。これを繰り返すことで、より少ない水量で作物は以前にまして成長するという。

 点滴灌漑農業は、現在一般的に行われている溢水農業の30〜20%の水量しか使わない事が知られているが、この部分乾燥灌漑ではさらにその半分の水量で済むと言う。その上、作物は背丈が短くなり収量は増加する。フルーツでは糖度が上がり品質向上となる。

 現在、国際コンソーシアムが作られ、キプロス、トルコ、ポルトガルと英国で実験が行われている。穀物の他、オリーブ、シトラス系果実、トマト、ナス、ラズベリーと綿花で成果が上がっている。

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