ダンテの森    
07 May 2012   05:58:17 am
原発の無い日本
原発の代わりは省エネで

 昨日から日本では原発が動いていない。電力会社はこの夏の電力不足をPRしているが、もともと電力量は猛暑の夏のピーク時に合わせ、もともと30%の原発と10%の火力発電所が保守点検で止まる事を考慮した上での需要予測であるので、本当の電力不足で停電になるとは思えない。電力会社が勝手に立てた売上予算に合わなくなり、採算が悪くなるだけの話である。

 電力業界ではすでに原発に代わる化石燃料を燃やす発電所の増設を検討する等と言い始めているが、とんでもない事で有る。それでは、再生可能エネルギーの太陽光発電所や風力タービンをそこいらじゅうに作ると言う事でも無い。

 解決策は「省エネ」である。

 建築物を高断熱構造にする事で暖冷房に掛るエネルギーを80%節約できるパッシブハウスについてはこのブログで何度も書いて来た通りである。これは何も新築に限らない、リフォームで十分に対応可能である。集合住宅や商業ビルを外断熱構造にして空調システムを改造する技術も確立している。

 重工業の分野では、例えばセメントをポートランドセメントからジオポリマーセメントに換える事で製造時に使うエネルギー量が80%節約できる。

 農業分野では点滴灌漑にする事で、水の使用量が80%少なくなり、灌漑用のポンプなどで使うエネルギ―を80%節約できる。同時に肥料の使用量は95%少なくなる為に高温・高圧力を使う化学肥料工場を幾つも停止する事が可能になりそのエネルギーが節約できる。その上、土壌汚染や富栄養化の為に起きている湖沼のアオコや海の赤潮もなくなる。

 東北の被災地の市街地の再建は都市設計を持続可能性都市とする事、つまり自動車によらない移動が可能な都市づくりを計画し、徒歩で用が足せる街、自転車で通勤・通学が可能な街を作る事で、都市が消費するエネルギーを大幅に少なくする事ができる。東北は世界のモデル都市を作れる最大のチャンスである。

 これらはこのブログで毎日書いてきていることであるが、達成できる省エネは数%等ではなく数10%〜80%の省エネができるので、原発が全部止まってもまだ電力は余り、旧式の火力発電所はつぎつぎと停止できる。

 省エネは最も手っ取り早いエネルギー源なのである。電力会社が今でも企業の規模を大きくする事を長期計画にしているとすれば、それは我々の目指す持続可能性社会には適応できない企業の有り方である。
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06 May 2012   06:24:58 am
都市混雑課税(渋滞税)
実施した都市では市民の支持が得られている。

 今日は、日本から原子力発電所からの電気が無くなった記念すべき日である。

 2000年、コロンビアの首都ボゴタは市内の自動車数の増大にストップをかけた。ガソリン税は20%に上げられた。ラッシュアワーには40%の自動車は通行が禁止となった。ボゴタ市はノ―・カ―デ―を制定し、一年に一日は一切の個人所有の自動車の市内乗り入れを禁止した。この取り組みは世界の大都市から羨望のまなざしで見られている。ボゴタ市の自動車制限への挑戦パッケージは公共交通機関の利用を推進したした事で市内の渋滞が解消しただけで無く大きな効果があった。市内交通の平均速度は43%早くなり、通勤時間が29%短くなり、交通事故件数が28%減少した。ボゴタ市は更に強力な計画を進めており、2015年には毎日6時間は個人所有の自動車の市内乗り入れが禁止される。これは2000年に市民投票が実施され、市の再生を図る為に車の使用をやめ道路を歩行者と自転車にかえし公共交通機関を利用する事が、過半数の市民の支持により決定されたものである。

 ボゴタに習って他の国でも混雑課税が導入されているが、その方法はまちまちである。アメリカでは市に入る境界にゲートを設けあらかじめ購入した電子式のパスが無ければゲートは開かない。但し、バス、タクシー、緊急車両と市内居住者には無料パスが支給されている。ミラノでは指定された省エネ性能の優れた車は市内乗り込みが許される。ノルウエ―では指定を受けた軽自動車には特別許可が与えられている。

 最も注目すべきは2003年にロンドン市長が行った市内混雑地域の一部道路の封鎖である。その効果は交通量が21%減少した為に、粉塵と窒素酸化物が12%減り、地球温暖化ガス排出量が20%減った。公共交通機関は2006年と2007年だけで、160億円(1億2300万ポンド)の増収があった。この結果ロンドン市民から混雑課税に対する理解を得る事ができた。これを実施したKen Livingstoneは世界的に有名な名市長となった。彼は混雑課税を1日1000円から3200円に上げようとしたが、彼の後任者はその実施を見送っている。

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05 May 2012   06:03:11 am
農業の省エネ
無駄なエネルギー消費が目立つ農業、きめ細かな管理が必要。

 現代農業の環境負荷は18%のGHG(地球温暖化ガス)の排出と70%の水の消費である。現状の農業のエネルギー消費がこのまま推移すると、2030年には55億トンのGHGを排出する事になる。このGHG排出要因の80%は農業用水の確保に使われるエネルギーである。ファクター5では点滴灌漑と言う方法で農業を行う事でエネルギーは80%、農業用水は90%、化学肥料は95%が節約できると推奨している。(2011/9/19-9/20のブログ参照)。
 
 しかし、それ以外にも農業が取り組める省エネ課題は数々あるようだ。

■灌漑システムの適正化
カンサス大学の調査によると、灌漑システムを適正な規模に調整して、設備の保全を適正に行うことだけで40%の省エネが可能であるとしている。

■加温システム
農業において加温はエネルギー消費の大きな部分を占めている。こまめなON/OFFや温室の保全など初歩的な対策のみで30%の消費の低減が可能である。温室の排気を一旦熱交換器に取り込み外気を導入する際にこの熱交換器により予熱して外気を取り込む熱リサイクルシステムを導入すると80%の省エネが可能である。

■収穫された穀物は加熱乾燥される場合が多い。家畜排せつ物等から取り出したバイオ燃料を熱源に使う事で外部からのエネルギー供給を受ける必要がなくなる。

■照明は農家のエネルギー消費の20%を占めている。光源をタングステンランプから蛍光灯やLEDに交換する事で80%の消費の低減ができる。

■建築物。築後数百年経た農家であっても外断熱等のリフォームをする事で数10%の省エネは容易に可能である。建て替えや新築の場合はパッシブハウス基準とする事で、80〜90%の省エネが達成できる。

■冷蔵。酪農家においては冷蔵に掛るエネルギーが大きい。冷凍設備が20年以上経過している場合はそれを最新の設備に交換するだけで50%以上も省エネが可能である。

■計画的耕作。施肥の時期、適正量、作付け体系、家畜糞尿の貯蔵と農地への投入の適正化などを行う事で化学肥料の使用量の最大85%の大幅削減が可能である。

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04 May 2012   06:07:52 am
貨物輸送
貨物輸送の新たな枠組みが必要

 世界の貨物輸送はここ数十年で急激に増加している。世界で年率3.6〜5.9%で増加の一途をたどっている。今後の増加の推測は年率4%とされている。

 WBCSD(持続可能な開発のための経済人会議、World Business Council for Sustainability)はこれを年率で2.3%以下に抑えるべきであると提唱しており、持続可能社会を模索する国々は貨物輸送の新たな枠組みが必要であるとしている。

 トラック輸送は短距離輸送に限り、長距離輸送ターミナルから最終顧客までの配送のみとするべきで、長距離輸送は鉄道か船舶により輸送されるべきである。このシステムが実現することで輸送にかかるエネルギーを85%省エネする事が可能となる。

 次の表は1トンの貨物を1キロメートル輸送するのに必要なエネルギー量をMJ(メガジュール)で表したもので、右端の列は排出されるGHG(地球温暖化ガス)をCO2換算のグラムで表している。
 国により産業構造が異なるために運送の重要度が異なる。アメリカとオーストラリアでは運送の重要性は高く、日本や欧州では低い。ある単位GDPに含まれる輸送コストを比較すると国ごとの違いが分かる。

 次のグラフはGDPに含まれる輸送コストをいくつかの代表的な国を取り上げ、その1973と2003年で比較したものである。30年間の間に船舶、鉄道、トラックの輸送の量的変化がわかる。前述したWBCSDの提言に反しアメリカとオーストラリアでは船舶輸送と鉄道が減少しトラック輸送が増加している。


 残念ながら今のところいずれの国も貨物輸送の形態に手を付ける様子は伺えない。
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03 May 2012   11:50:16 am
セメント産業の省エネ
セメント産業の多元的な環境対策

 セメント産業は鉄鋼と並んで高エネルギー消費産業である。セメント産業が排出するGHG(地球温暖化ガス)は5〜8%と大きい。これはセメントを製造する為には石灰石を1400度の高温で焼結させるためにキルンと呼ばれる回転窯を1800度にも熱する必要が有る事と、この時石灰石が多量のCO2を放出する事に由来する。セメント1トンを製造すると0.8トンのCO2が排出される。セメント需要は中国、インド等で急激に伸びており2000年には世界で1.5Gt(ギガトン)であったが2020年には4Gtを上回ると推測されている。

 IPCCの多元的なCO2低減アプローチによれば、現状のコンクリートのセメント、骨材、水の混合比を最適化する事で20%のセメント使用量を減らす事ができるとしている。IPCCの次の戦略は建築物の設計寿命の延長である。長寿命設計の建築物にする事でセメント使用量の総量を減らす事ができる。IPCCの次なる手はセメント製造プロセスの改善によるものである。1970年のオイルショック時に資源を持たない日本、ドイツのセメント産業は省エネを積極的に進めた結果、従来1トンのセメントを製造するのに5GJ(ギガジュール)の熱量を必要としていたものを2002年には3.1GJまで低減している。日本やドイツの技術を世界の他の国が習って導入すれば世界で40%の省エネが可能となる。特に爆発的に生産量が増えている中国、インドでの省エネが重要である。一般的には大型のセメント工場の方が省エネ効果を出しやすいとされているが、その為に輸送距離が増えると輸送によるCO2排出が増加する問題がある。

 効果としては少ないが、代替エネルギー源を熱源に使うアプローチも有る。従来95%は化石燃料を熱源にしているが、古タイヤ、廃プラスチック等を熱源に利用する事が進められている。ブラジルでは森林を伐採して作った木炭を熱源にしているが、森林伐採による環境負荷の方が大きく推奨されない。

 日本やドイツではセメント工場が高温処理ができる為にダイオキシンを発生しない安全なゴミ処理施設としての使い方も行われている。これはエネルギー使用量の低減には貢献していないが環境負荷を別の面から低減していると言える。


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